中年ITサラリーマンの平和な日常は突然に….
週明けの月曜朝9時半。
いつも通り僕は会社にいた。
僕は、都内のIT会社に勤める普通の中年サラリーマン。
主にウェブに出す広告や、キャンペーンなんかを作っている会社に勤めている。
毎朝8時台にちゃんと満員電車に乗り、ちゃんとスマホで興味のあるニュースだけチェック。
ちょっと早めにオフィスに到着して、いつも通りレッドブル。
ベルトに少しのってきたウエストについた肉を落とすために、
オフィスの椅子の代わりに導入したバランスボールをボヨンボヨンさせながら、
部下からの報告チャットや、お客様のメールに目を通していく。
同じフロアにいる営業部隊から、
「昨日は飲みすぎた〜」
「今月の数字がまだ未達なんだよ〜」
みたいな気だるい声も聞こえる。
本当にいつも通りの朝。なのだが、
実は、大きく変わったことがあった。
それは、今月から僕の会社は株主が大きく変わった。
そう「M&A」されたのだ。
かと言って、特に何かが変わることもなく。社名もそのまんま。
何事もなかったかのように日常は過ぎていった。
というわけで、僕はいつも通り休みボケの頭と目を抱えたまま、
その週もゆっくりと仕事モードのエンジンをかけつつ、
パソコンのディスプレイを見ていた。
しかし、
事件はその後の「週の定例会議」で起きた。
「来月、僕はこの会社を辞めます。」と社長は言った。
急に社長がみんなの前でこの言葉を言った瞬間、
本当に会議の椅子から半分転げ落ちそうになった。
半分寝ながら会議の資料を眺めていた僕だったが、
そんなの資料のどこにものってなかったぞ。
社長は言葉を続ける…
社長「ちなみに、辞めた後、一ヶ月半ほどハワイに行く予定です。」
社員たち「ざわ….ざわ….」
社長「今までありがとうございました。」
いやいや、、ハワイて!?と心の中でツッコミながら、マジで説明が足りない社長に聞きたいことが山ほどあった。
会議が終わって誰よりも早めに、僕は社長のデスクに向かった。
ボク「社長!急に辞めるってどういうことですか?ハワイぃいい?!」
と、聞いたボクに社長はまぁまぁ、と席をすすめた。
僕が座るのを確かめてから、社長は椅子を回して僕の方に向き直っていった。
社長「いや、本当に急な発表になっちゃいましたが、辞めよっかな〜。って思ったんですよ。」
ボク「いやいや、社長が辞めるって他の社員たちはどうすればいいんですか?」
社長「まぁ、なんとかなりますよ。ま、言ってみれば、ボクももう社長といっても雇われですから 。」
ボク「でも、まず社長がいなくなるなんて…なんでですか?!」
社長「だって、僕のやりたいように、今の会社ではできなくなっちゃったんです。僕のやりたい仕事はここにいたらできないんですね。」
ボク「…。」
社長「ボクさんは、自分で自信が持ってやれていない今の仕事を、我が子に胸を張って説明できますか?」
ボク「…。それはできないと思います。」
社長「そういうことなんです。だからすいません。辞めます。」
その時に、僕は結婚はしていたが、まだ家庭に子供はいなかった。
気楽な夫婦生活を営んでいたが、その時の社長の言葉は「家族の長」としての真っ当な意見に思えたのだ。
そう言われてぐうの音も出なかった僕は、すごすごと自分のデスクに戻った。
もし、僕に子供ができたら…社長と同じことを考えるのだろうか。
その後、新しい社長がM&Aのお偉いさんの意向により決められ、
社長はハワイに飛び立った。
僕の胸中はずっとざわついたままだった。
(続きます。)

「嫁を毎日60回ホメる」フリーのWebコンサル。菓子パンも買えなかったデザイナー見習いが、今では家族を養えて幸せ。ウェブスキルを使った人生の攻略のコツを、実際の経験からつぶやきます!大好物: ❣️日本酒 →利酒師取得 ❣️筋トレ後の #プロテイン